2007年9月17日月曜日

オーロラ夜間飛行と死

オーロラの降りそそぐ空を飛んだ

それは8月の終わり、
フェアバンクスから
20マイル北の空

離陸とともに
自分の翼下が
フェアバンクスの
オレンジ色で補完されてゆく。

暗夜の海の小さな灯り。
街を外れると、
自分以外のものはすべて真っ暗。

怖いと思う。
アラスカの空を飛んでいて
初めて気味悪かった。
飛行機の計器は3つ壊れていて
そのうち、姿勢指示器は完全に故障。
カネがもったいないから直さないが、
それはなくても飛ぶ。

死というものを少し意識する。
きっと自分が、おかしくなったら
この飛行機は落ちて僕は死ぬだろう。
夜に姿勢がわからなくなって死んでいった
パイロットは沢山いる。
正常であるという言葉は
こういう状況だけで使用される。

人間の生命力が一番活発な時、
それは死を意識する時。
これは間違いない。

安全でとりあえず、、という場所で
スマートに遊ぶ知識人より
崖っぷちで死にそうなことをやっている
クレイジーな貧乏人に興味がある。
そこにあるのは真実だと思う。

オーロラは、完璧だった。
ハスキーの透明天井に映るブレイクしたオーロラは
空間の上下を僕に伝える媒介であって
観賞用ではなかったが、でも美しかった。

深夜3時ごろ着陸。
帰宅後、ウイスキーを飲んで
鴨長明の朗読を聞く。
とても不思議な感覚におそわれる。

小さな達成感、疲労、孤独。

たぶん死ぬまでこんな感じだ

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