2010年5月31日月曜日

フラックスマン島

北極海という名の氷原を飛びながら、
航空地図を眺める。

氷が一帯を覆うハッキリしない地形では、
地図だけが周辺になにがあるかを教えてくれる。

ふと細長い地形である島の名前を見てみると、

Flaxman Island

と書いてある場所があった。


フラックスマン島・・・聞いたことがある。


たしかフランク安田が、ここで住んでいたはず。

もしかして、
まだその当時の家はあるのだろうか?


早速、北極海を西進しフラックスマン島を目指してみる。




フラックスマン島はポリゴンで形成され、
あまり見たことのない雰囲気だ。

しかし、島には霧が立ちこめて
建造物があるかどうかは、なかなか確認できない。

何回も島の周りを飛び続け、
霧の切れ間からフランク安田が住んでいたであろう家を探す。

しかしながら霧が濃く、なかなか発見できない。
何回も島の周りを旋回しているのだが・・

ほぼあきらめかけた時、霧が少し晴れてきて、
廃屋のような建造物が出てきた。




屋根が吹き飛び、ひどい状態だが
家らしきものは、確かにそこにあった。


北極海沿岸部らしい濃い霧の中、
ひとつ、日本人の痕跡を見つけられた喜びを感じる。


そしてひとり飛びながら、
変化と移動に富んだ運命の中、
フラックスマン島に一時、
住んだフランク安田のことを思いつつ、


移動は我々の本質であり、
移動そのものに意味があるのではないか


などと思ってしまう。



流れず澱んだ水に価値がないのと同じで、
我々は少なくとも、
現時点で移動と連続的な思考をやめてしまったら、そこでアウトだ。



その後、北極海の霧はさらに濃くなり、
私は逃げるように針路を南へ、
スーザンの待つカビックへと戻った。

2010年5月29日土曜日

北極海へ


北極海まで45分ぐらいの場所にいる私は、
ちょっとそこまで、の感覚で

Arctic Sea

を見に飛んできました。


地図を見ながら、
真北を進み北極海を探します。

しかし、このまま進めば、
北極海が前方に見えるはずなのに
海と陸の境界線であるはずの海岸線はどこにもない。


コンパスがおかしいのだろうか??

操縦席でひとり、よくよく考えてみると、
目の前にあるはずの海の上には、
海氷が視界の限りを埋め尽くし、

操縦席の向こうは、限りなく広がる氷原・・・


まだこの時期でも、北極海は氷に覆われ、
景色は、壮大な冬なのです。


フェアバンクスは、真夏日が続く毎日という話なのに
この違いったら、いったい・・・・どういうことなのだろうか。


果てしなく続く海氷の上を
ずっと飛び続け、北極点まで行きたくなる衝動を抑えて
海岸線をしばし、物思いにふけりながら飛んでおりました。

2010年5月27日木曜日

ブッシュパイロット・ママ



私は、ノーススロープを飛ぶブッシュパイロットたちの
お母さんのようなものよ。

誰がどこでいつ飛んでいるのか、いつ戻ってくるのか、
いつも掌握しているの。
特に夏は、沢山の数のパイロットが来るから、
そのすべてのリストを作って
誰がどこに行っていつ戻ってくるのか、必ず聞いているわ。

たまに濃い霧のときに、燃料がなくなって迷ってしまったパイロットが
川を頼りにふらふらと朝3時ぐらいにカビックへ降りてくることがあるのよ。

そのときは私も起きて、
コーヒーを入れてあげて即席ピザを食べさせて
ゆっくりと休ませてあげるの。


ロジャー・ケイというブッシュパイロットは、
本当にこの場所が気に入って
いつもここに給油ついでにコーヒーをのみに来るわ。

彼は、とある晴天の日ここにやってきて、

「スーザン、もう今日は飛びたくないから、霧を作ってくれ」

って私に言うの。

霧の日は、無線機の調子も悪くなることを知っているから、
私は、デッドホースにある彼のボスのいるオフィスにわざと雑音を作って

「こちら、、ザーッ(わざと雑音を作る)、カビッ(ザー・・・)ク、
海霧が(ザーッ)・・・飛べない気象状態(ここだけはハッキリと言う(笑))」

と無線で、霧を作ってあげたわ。

もう飛ばなくて良いと安心したロジャーは、晴天のなか愛用の椅子を外に持ってゆき、
のんびりと大好きなスコッチを傾けながら、ツンドラを眺めてリラックスしていたわ。
ロジャーは、それはもう幸せそうだった。

私はそれ以来、
食事やコーヒーの他にも、霧だって作ってあげちゃうの。



でもある日、こんなことがあった。

いつか、2人の大人と子供が飛行機でここへやってきた。
一組は親子で、その親の友人が一緒と言うことだった。

私は握手して挨拶したあと、
彼らが燃料が欲しいというから燃料を入れてあげて、
サンドイッチを作ってあげた。


彼らはシープハンティングに行くというので、
どこにいくの?いつ帰ってくるの?
と聞いたわ。

すると、

「2,3日後に戻ってくるよ、場所はだいたい・・・」

とはっきりしない答えが返ってきた。

あるハンターは、シープのいる場所を秘密にしているから
それも仕方ないかと思って、そのまま聞き流したの。
ただここに戻ってくると言うことだけはきちんと確認した。

その後、その親子と友人は、
シープハンティングへブルックス山脈へ飛んでいった。

それから、数日後、
この周辺は、とても悪い天気になったの。

飛行機が飛べるような天気ではなく、
州警察からあの親子の飛行機ナンバーの確認の電話がかかってきたわ。
でも、親子は場所を私に正確に教えてくれなかったから、
どこにいるのか分からなかった。
彼らは戻ってきていないのでまだ山脈のどこかにいる、とだけ伝えた。

私はきっと、あの親子が山の中で天気が悪くなって離陸できず
連絡がつかなくなっているのだと思ったわ。

その後、どうしようも出来ない数日を過ごしたあと、
その親子の子供だけが10日後に救出された、という連絡を聞いた。

話を詳しく聞くと、
大人二人でシープの場所を見るために山脈を飛んでくるから、
子供は待つようにと言われたそうだ。
しかし、それからずーっと父親とその友人が乗った飛行機は
戻ってこなかった。

ひとりでキャンプ地に残された子供は、
心配になったがどうすることも出来きず、ただクマの恐怖と戦っていた。

父親たちが帰ってこない不安の中、
それからしばらくして子供は、地上に石を置いて
「HELP」という救出して欲しい旨の文字を作って、待ち続けた。

すると10日後に救助が訪れた。

そしてあとで分かったことだが、父親と友人が乗った飛行機は、
どこかの山で墜落してしまったということだった。


スーザンは言う。

ハンティングをしたり、飛行機を飛ばしたり、
そういうことをするだけでも、アラスカは本当にハードな場所なの。

だから私は、ここを自分の家のようにして
戻ってきて欲しいし、いつも無事を願っているわ。
でもいつも願うことしかできない。

だからあなたも、いつも安全を最優先に飛ぶのよ。
飛行機は壊したっていい、どれだけお金を使ったっていい、
ツンドラだって踏みつぶしたっていい。
でも自分は生き残るというシンプルなことだけは絶対に
おろそかにしないで。

それが、ここの唯一のルールなのよ。

2010年5月26日水曜日

カリブーの徒渉



飛行機の整備をして戻ってくると
スーザンさんが、キャンプにあるコンテナの屋根に登って
何か見ている。

「川の方を見て! カリブーが川を渡りはじめたわ」


カリブーが数十頭、二日前に解氷した
目の前の川を渡りはじめている。

ここ数日で気温が上がり、
いままで氷結していた川が割れて流れが戻ってきたので、
カリブーは体を濡らして川を渡らなければならなくなった。

大きな個体である大人のカリブーは、
多少立ち止まったあと、なんなく川を渡ってしまうが
去年生まれたばかりの
まだ体の小さいカリブーは、
冷たい流れの中に入るのを嫌がっている様子だ。


「よく見て。しっぽが上を向いて跳ねるように歩いているカリブーは、
迷って困って誰かに助けてもらいたいのよ」


なるほど、どんどん先に行ってしまう大人たちに
助けを請うような表情でウロウロしつつ、
入水を躊躇している小さなカリブーの仕草が、手に取るように分かる。


結局、群れの最後に小さなカリブーが2頭
川の中州に残されてしまった。


「がんばれ、頑張って川を渡らないと
グリズリーかオオカミに食べられちゃうぞ」

スーザンさんが、カリブー2頭に檄を飛ばしている。

そして彼女は私にこう話した。


「以前も、こういう状況があってどうしても川を渡れないカリブーがいたの。そのとき私は、何とか渡れるようにしてあげようと思った、でも、それは自然の掟を曲げてしまうようなことだから、結局できなかったの」

「目の前のカリブーは結局、川を渡れずにそこで死んだわ。私は泣きながら、そのカリブーを動かして下流へ流した。そのままキャンプ近くにカリブーの死骸をおいておけば、今度は私がグリズリーに殺されるかもしれないから・・」



残った2匹のうち、少し体の大きいカリブーが、
川を渡りきった。前進ずぶ濡れで、ずいぶん寒そうだ。


「そうだ、残ったバンビちゃんも頑張れ!」

スーザンさんが叫んだあとこう言った。

「そう、、自然がNoといえば動物たちはそれまでだわ、だからね・・」



その後、最後のバンビは5分ぐらいウロウロしたあと、
なんとか川を渡りきった。やせ細った小さい体が、
さらに濡れて体毛がペシャンコになり、ずいぶん貧弱な姿になったが、
川を渡った興奮からか、いきなり凄いスピードで走り出し、
母親がいると思われる集団に戻っていった。

そういえば去年も同じように川を渡ったあと、
狂ったように走り出すバンビが、
夏のイビシャック川にいたことを思い出した。

生命の危機を克服してハイテンションになったのだろうか。
であれば、成長の過程における熱狂と死は隣り合わせということになる。


遠く霞んで見える海霧を背景に走る濡れたカリブーが、
シルエットになる光景を双眼鏡で見ていると、
なんだか自分が地球の映画を見ているような気がして
ちょっとそのことをスーザンさんに話してみた。


「この場所は自分の心を映す世界よ。
動物の行動や仕草は、私たちがそこにいなくても
刻々と起こっていることだけれど、やはりそれを見ている
自分の目や心がないと、その風景は存在しないわ」

「だから、目の前の風景は誰かが作った映画なんかではなく
自分そのものであるとも言えるわ、
だって今の自分の行動を選んだのは、自分でしょ?」


スーザンさんと話しながら、
目の前の恐ろしく美しい風景を見ていると


「こういうことを伝える仕事があってもいいか」

という気持ちになる。

少なくとも世界を見て知ろうとしていれば、
自分の仕事は存在し続けるだろうと思う。



以上、カビック滞在4日目の出来事でした。

2010年5月24日月曜日

カビックのスーザン


北緯70度(正確にはN69.40)のカビックキャンプでは、
スーザンさんという管理人(というか唯一の住人)が
1人でお客さんを切り盛りしています。

しかしながら冬は誰も来ない場所でもあり、
私は去年の12月から約半年ぶりに出会う人間だそうで
それはもう歓迎してくれました。

一緒に食事をしながら、いろいろとお話を聞きました。

このスーザンさん、7年前からこのキャンプの管理をしているそうです。

6月から8月までは、
ブッシュパイロットが連れてくるお客さんのお世話で忙しく、
その他のシーズンは、それなりにキャンプの維持をしながら、
自然を楽しんでいる様子です。

私のテントの前で誰かと話している
スーさん(スーザンのニックネーム)、

マージさん

この北極ジリスが友達であるらしく

「マージ、マージ!」

とお話しをしていました。

そのほかにもキツネやフィレットの類も友達であるらしく
盛んに声をかけていました。

まるで北の国からの螢ちゃんのようですが、
現実のアラスカはそう甘いものではありません。

スーさんは2年前、川で取水ポンプの作業をしている時に
グリズリーに襲われた時の話をしてくれました。




キャンプから数十メートルにある川から
取水ポンプを外す作業をしていた時、
突然見えない場所から、グリズリーが襲ってきたの。

そのときは、銃を持って行っていたのだけれど
側に置いて作業をしていたから、間に合わなかった。


まず後頭部を咬まれて、(後頭部の傷を触らせてもらう・・・)
そのあと、お尻を叩かれたの。

そのとき私は、

「このクマは、この場所を自分のテリトリーにしたいだけなんだ」

と思って、死んだふりをしたの。

するとグリズリーは、私を転がして
私が無抵抗であることを試したわ。

こういう時は、抵抗したり力を加えたりすると
相手がそれに気が付いて、やられてしまうから
じっと我慢するのよ。

グリズリーは人間を食べに来ているのではなく、
自分のテリトリーであることを証明したいだけなんだから。

その後、2〜30分グリズリーは私を転がしたけど、
そのうち、いなくなったわ。

すでに歩けなく出血していた私は、キャンプまでの距離を
這って戻って、電話で助けを呼んだの。

しかし、その後パイロットの助けが来たのは、10日後。
その間、私はずーっと1人でこのキャンプで
耐えていなくてはいけなかったの・・・・

結局、フェアバンクス経由でシアトルまで戻って
手当を受けたわ。




現在も元気に働くスーさんだが、
クマへの警戒心は、非常に強い。

テント内には、銃が5丁ほどあり
すべてがロードされている(弾がこめられている)状態だ。

「外に出る時は、いつも周囲を警戒すること」

「まずは、周囲をみること、それから動き出して」

「音にも十分注意して行動して」


北海道でも、最近ヒグマに襲われた方の
ニュースがありましたが、

自然の中では、人間は本当に弱いものである

と実感している次第です。
前回の更新から2日後、 
北極海へと続くノーススロープの
とあるキャンプ地へたどり着きました。




 
北緯は約70度、ハスキーは冬の運用を強いられ、 
まだまだ雪が残っている不思議な場所です。  

http://share.findmespot.com/shared/faces/viewspots.jsp?glId=03RdL8g1LFQh5r7jIincEGfgYlpAcB88m 
私の飛行軌跡は場所はこちらで確認できます。  

ブルックス山脈の中にある村から 
ノーススロープのカビックを目指したわけですが、 
アラスカ気象通報によると 北極海沿岸部は、
ここ数週間ずーっと海霧の覆われており、 
限られた燃料でどのようにして飛行判断を下すか、 
非常に難しいところでした。

 




衛星画像などを確認しつつ 海霧のラインを見極めて離陸しましたが、 
ノーススロープを飛んでいる時間は、気が気でなかったです。  
しかしながらそんな怖れのなかでも、 
飛べど進めど何もない極北の大雪原に 
地球上のすべてがあるような錯覚が支配して 
心の中は豊かなもので満たされていました。  

 
飛行中、カリブーの群れがいたるところで確認できました。







これから数週間滞在するキャンプ地は、 
テントやコンテナハウスが建ち並ぶ 
まるで南極の越冬基地のようなところです。 
(テレビでしか見たことはありませんが)
 




周囲をぱっと見渡すと、  
カリブー、ライチョウ、ガン、北極ジリス・・・  
がキャンプ周辺で見られます。  




グリズリー、オオカミなんかも 
これから現れるそうです。 




私は動物写真家ではない、なんて言っておられず、 
外に出る時は常にカメラと双眼鏡を持ち歩いています。  




このキャンプ地は、 
動物好き、自然好きな人にとって 
いわば天国のような場所であり、 
まさに極北の夢を目の当たりにしているよう・・・




p.s. きちんとネットができるところがまた凄いなと思う次第です。 
明日からカリブーの調査飛行をしようと思っています。



2010年5月20日木曜日

ブリザードの北極圏へ

本日は、カメラクルーを乗せてフェアバンクス近郊を
テストフライトしました。 晴天が続くフェアバンクスでは、 さっそく山火事が! 写真家の前川貴行さんと撮影テストをかねて 山火事現場まで飛んできました。 発見した昨日に比べて鎮火しているものの まだ炎は、しっかりと上がっており、 この段階で消さないと広がるばかりのような気がします。 別の数マイル離れた場所でも煙が立ちこめていて、 今のところ、フェアバンクス空港の南18マイルに合計2カ所の山火事です。 山火事自体は、どうしようもない自然現象ですが うーん、、、とにかく、今年のフェアバンクスも 昨年に続いて厳しいフライトになりそうです。 これは昨年の7月、ユーコン川側の大規模山火事 (今年のは、まだ小さいです) ところで! いよいよ明日から、北極圏へ進出します。 明日は、アナクトビックパスへいき、クルーと集合。 夕方以降のブルックスレンジを撮影します。 明後日は、ノーススロープへ突入し、 カリブーの大群を探しつつキャンプ地へ向かいます。 それで事前に キャンプ地の映像を入手したのですが・・・



こんな感じで、カリブーが雪の中に佇んでいます。 吹雪で、天気悪くブリザード状態だそう・・・ 今年は、雪解けが異常に遅く変な年だそうです。 大丈夫だろうか? Tシャツ姿のフェアバンクスから、 急に冬に逆戻りです。 とにかく行かねばならないので、いってきます!

2010年5月12日水曜日

ユーコン川の空撮動画


(Canon 7Dにて撮影)


(TM-700にて撮影)


一度、ユーコン川でテスト撮影の終わった

TM-700(Panasonic)
5Dmark2(Canon)
7Dmark2(Canon)

の撮影画像を見ながら、何が問題点で
どういう解決策があるのか、毎日ハンガーで研究しています。


ちなみにあまり紹介していませんでしたが、

アラスカ・フェアバンクス
Chena Marina飛行場にあるハンガー

「野営飛行舎オフィス」


は、こんな感じの場所です。

ハスキーが格納されています



オフィスというか作業場というか、ソファと机、椅子があります。
あと翼の下でお酒やコーヒーが飲めます。


フェアバンクス郊外のちいさな飛行場にあるこのハンガーは、
春・秋・冬はオーロラも見られる場所で
なかなかよいロケーション。

このハンガーで、思索にふけったり
ハスキーの整備をしたり、
離着陸する飛行機を眺めていたり、
友人とお喋りしたり(あまりこないけれど)・・・・


最近は、カメラのマウントに関する作業に没頭しています。



ここで各機材の初映像を見ての感想。
(ちょっと専門的です)


5Dmark2/7D

一眼レフで、すぐにフルHD動画が撮れるのは画期的。いままでスチルカメラ(NikonD3)だけだったのが、動画までとっさに撮れるようになったのだから、狭い空間である操縦席での撮影では大変便利。画質は、さすがに空撮という特殊な環境なので、早いパンニングでは荒れたり乱れたりするので、ちょっと辛口な評価になってしまうが、交換式レンズカメラで「HDが撮れる」と言うだけでも凄いと思う。遠景で翼を入れるような広角系のゆったりとした風景の動きであれば、十分に美しい動画が撮れるので、気流の安定した条件のよい時は、素晴らしい絵を叩きだしてくれると思う。


TM-700

思ったより動態歪みが多い。MOSの限界か?。飛行機に逆さまの状態でマウントすると振動を吸収せず、そのまま映像もぶれるので困る。結局、操縦桿を両足で挟み込んで操縱し、両手で撮影、これで安定した絵は何とか撮れる。もちろん小さいカメラなので保持はラクだけれど、やはり足だけでの超低空飛行は怖い。絵的には、以前のCCD機、HVX-200の方が安心感があるが、解像感はこちらが上。1080p60の絵がスムースに動くのは、まさに圧巻。現時点ではカメラ自体の大きさを加味すると最高の野営飛行舎空撮カメラに違いない。

ちなみに上記評価は空撮時における動画機能の評価であり、
各カメラとも撮影条件の安定した地上においての動画は本当に素晴らしいです。



ということで、TM-700のマウントを改良。

飛行機にマウント状態

ステーに厚い振動吸収用のゴムを挟んで2点支持。
その上で、アームをうまく加工してカメラレンズ部を窓に固定して
3点支持の形を作り安定化を図る。
(これでも、撮影中は左手が必要)




現在、DVDとBlu-rayを販売していますが、
前回の作品は、非常に重くて大きな業務用カメラであったため、
1人で撮影することが難しく、
(結局、映像の大半はKaji君にお願いして撮影してもらった)
今回このような小さくて、性能が優れるハンディカメラを導入したのです。

NHKさんのような技術力も資本もある方々の撮影では、
本当にピタッととまった空撮の画像がありますが、
こちらはそんなことはできません。
(いずれはNHKさんに空撮用のスタビライザーを貸してもらいたい)

しかしながら、
せっかくアラスカの空を自由に飛んでいるわけですから
ここは妥協せず、揺れと戦いながら撮影してゆこうと思っています。
(ちなみに、ここまでの加工賃、約50ドル前後)


カリブー撮影条件が整わず、
なかなか飛び出せない昨今ですが
準備は、着々と進めています。

2010年5月9日日曜日

ユーコン川の解氷


ユーコン川上空を飛ぶ(5/7 0800)




昨日、アラスカ・ウエザーチャンネルで 

好天の予報とユーコン川のブレイクアップ(解氷)の情報が入ったので 
その撮影にユーコン川まで飛んできました。 


ユーコン川は、カナダのユーコン準州から 
アメリカ合衆国のアラスカ州を流れ、
ベーリング海に注ぐ大河ですが 
冬期は、完全に凍ってしまいます。  


それがやっと5月になって溶けだすということで、 
そのダイナミックな情景を撮影してこようというわけです。  


フェアバンクスから離陸、湿地帯と山岳地を越え、 
1.5時間を要してユーコン川に到着。  


白い氷に覆われたユーコン川を見た時は、
 おもわず操縦席でひとり声を上げてしまいました。  







 
フェアバンクス周辺には、氷河がない。  


と思っていましたが、  


氷河に変わる素晴らしい氷がユーコン川にあるのを発見して
夏に変わりつつある極北の風景を感じつつ、 
この地球の軸の傾き具合に思いを馳せるのでした。  




この日の飛行時間、3.2時間 
今年のアラスカ飛行の始まりです。

2010年5月7日金曜日

フェアバンクスにて


愛車F-150・・・故障が怖い(笑)

フェアバンクスは、昨日雪が降りました。
日中の気温は、マイナス2~3度ぐらい。

北海道でもたまにこの時期、雪が降り気温が下がりますが
その感じと同じ一時的なもので
概ね北海道の春に準じた暖かさです。
道民の方は、何となく理解して頂けるかと思います。


さて、メインイベントである北極圏カリブー撮影飛行ですが
カリブーの移動は現在ブルックス山脈を越えたあたり、

しかもブルックス山脈より北のノーススロープという場所では
まだまだ雪が残り、川は結氷しており、
ベースキャンプ予定地では水が使えずと言う状態で、

同じアラスカでも緯度によって大違いの天候です。

ブッシュ飛行機ハスキーは、どんな場所にでも行けますが
地上に降りると弱いもので、燃料の補給と
比較的穏やかな天気でなければならない宿命があります。
だから、まだ待ちの状態が続いています。
理想は6月スタートと行ったところでしょうか。
アラスカのブッシュパイロットが稼ぐのも
たぶん5月下旬あたりからでしょう。

なぜこんな早い時期に来てしまったのか謎ですが(笑)
ともかくこう言う時は、地上で遊ぶに限ります。



一昨日は、フェアバンクス郊外にあるマーフィードームという場所へ
昨日は、その近くの森にウサギ狩りに出かけました。


ベタ雪のなか寒い思いをしながら、白樺とスプルースの混合林を
歩きましたが、ウサギは現れません。

しかし、極北の半ツンドラ大地の上を歩いていると
そのフカフカとした感触が夢見心地で、
本来肥沃ではないはずの極北の土地に
鉄砲持って歩いているだけで魅了されている自分に気が付きます。


動物の気配を感じつつ森を徘徊する

これが私のアラスカで最も充実した時間です。


私は、ただ森を歩いて誰かとお喋りしながら歩き頂上を目指すより、
緊張の糸が張り詰めた中、
いるかどうか分からない動物を探すために
ひたすら水平を移動するほうを好みます。


その意味、私にとってアラスカの魅力とは飛行機から眺める景色だけでない、
もっと肌で感じる地上の感触こそが、アラスカの魅力だと思っています。



狩猟と飛行のどちらをとるか?

と意地悪な質問を以前にされたことがありますが、
私は、即答で「狩猟」と答えたことがあります。


それは、

狩猟が意とした行為=目的

であるのに対して、

飛行は移動の行為=手段

だからです。


飛べればよいという考え方は、従属的な人生の悲哀です。
飛んで何をするのかが回答であるのですが、
そこら辺を知る操縦士は残念なところ、あまりいません。

飛行に限らず他のことでも、
若い人たちには、資格や自分が有利に生きることの作業以外に
自分なりの目的を模索して欲しいものです。

資格は手段であって満足を得るものではないのですから、
資格で有利になろうとか・・・そういう
日本の大人達がいうことを聞いてはいけませんよ。



長くなりました・・
他の、アラスカ情報を流しておきましょう。


北極海の町、バローではクジラが結構捕れている様子です。

フェアバンクスを流れるタナナ川は、テスト飛行の際に見ると
すでに解氷していました。

ユーコン川は、イーグルまで解氷しつつあるそうです。

ベーリング海から北極海にかけての海氷は、まだまだ残っている様子です。


まだ地上の時間がありそうなので
ちょっと北極圏までドライブに行こうかと考え中の湯口でした。

2010年5月3日月曜日

飛行出発準備(フェアバンクスにて)

フェアバンクス到着から一週間がたち、

1.飛行機の整備&テストフライト

2.撮影機材の準備

3.飛行先(北極圏North sloop)の情報収集

がほぼ終わりました。


1.飛行機の整備&テストフライト

ハンガーにて佇むハスキー

整備とテストフライトは、つつがなく終了。
毎年、タイヤがパンクしていたり、速度計がスタックしたり、
何かが起こっているのですが、今年はかなり順調な仕上がりです。

7が月ぶりの飛行してきましたが、特に違和感なく
いつもながら「体が覚えている飛行感覚」に自分でも驚きます。

原野におりる際に最も重要なShort field Landing(短距離着陸)も
納得いく距離(20mぐらいかな)でOK、しかし慢心しないように
気を引き締めてアラスカの自然と向き合いたいと思います。


2.撮影機材の準備


5Dmark2×2   7D×1   TM-700

今シーズンの撮影飛行から、

ニコン→キヤノン

に機材変更しました。

3月まで、本格的な動画撮影ができるニコン一眼レフを待っていたのですが

とうとう出ず(かなり待ったんだけど・・・)見切りを付けて、
とうとうキヤノンさんに機材変更しました。

映像も写真も撮影する私としては、
キヤノンさんの業務機を越える美しいFULL HD動画撮影機能が
羨ましくて仕方がなかったので、これも自然な流れかと思っています。

Lレンズ群!



ということで現時点での私のニーズは、明らかにキヤノン機ですが、
これで両方を使用することになるので
キヤノンVSニコンの比較は、また暇な時にでも書きます。



機材は、

5Dmark2
7D

16-35mmF2.8L2
24-105mmF4L
70-200mmF4L

35mmF1.4L
85mmF1.2L

をキヤノン・プロサポートさんからお借りしています。

あとは自前の

5Dmark2(サブ)

17-40mmF4L
24-105mmF4L
24mmF1.4L2
50mmF1.8

あとPanasonicの新型ハンディカム(この絵も素晴らしい)
TM-700

を持ってきていますのでなかなかの機材量ですが
昨シーズンまでは、業務用小型ビデオを持っていったことを考えると
全く楽なものです。

いい映像を撮影してきたいと思います。


3.飛行先(北極圏North sloop)の情報収集

これは、かなり面白い作業でした。(現在進行形ですが)
地図を買い込み、吉川教授にいろいろと教えて頂き、
地元にあるFish&Gameという公的機関で情報を得つつ、
限りある資金の中で、いつ出発するかを判断しなければなりません。

目的は、カリブーの大群を撮影すること。

現況では、カリブーはまだブルックス山脈のちょっと北側にいるようです。
ブルックス山脈の北に広がるノーススロープというツンドラ地帯は、
まだ冬の景色で吹雪も多く、飛行機の給油や滞在場所を考えると

「とりあえず、行ってみるか」

はできず、色々な要素を考えて出発時期を見計らっています。
当初の予定は5/1でしたが、むやみに飛んで
撮影資金を減らしては、どうしようもないので
ここが我慢のしどころ・・・ですね。



以上、出発前の状況報告でした。

次のレポートは、どこになるか分かりませんが
おたのしみに。