2008年12月31日水曜日

2008年湯口的エッセイ(2)

〜「アラスカ極北飛行」の出版〜

初めて出す自分の本だったので、執筆の日々は悩みと不安が交錯する半年(2008年上半期)でしたが、少なくとも写真だけは、綺麗に印刷された納得のゆく出来だったのでWell Doneというところです。

文章で自分の事を書くのは本当に難しく、それならばと開き直って自分の内面を単純に書いたストーリーが今回の「アラスカ極北飛行」です。
それが功を奏したのか?ストーリー中の登場人物が言う数々の台詞が、一部の読者さんたちに響いた、、というメールをもらったときは、本当に嬉しい気持ちになりました。

こんなん、いつまで売れるのか?

と思いつつ、いまだ私のホームページでは微妙に売れ続けているのが
これまた嬉しい限りです。


〜ぎりぎりの飛行〜

今年は、アラスカの村を沢山飛び回った、、と書いたけれど
その道中は、本当にドキドキハラハラで、エンジン一つの布張り飛行機が
アラスカ中を飛び回る、その危険性をいかに良い意味で無視するか・・それが
今回の旅の要点でした。

安全飛行の要は、やはり経済であり
一円もないのに、飛ぶと言うことは絶対に無理なのです。

よく
「湯口さんはアラスカを、いつも自由きままに飛んでいます」
なんて紹介されるけれど、

「湯口さんはアラスカを、いつも不安に駆られながら飛んでいます」
(不安の原因→ガソリン代とエンジン故障)

に変えてくれないかと、真剣に思うことがある。

こんな冒険飛行が来年も出来るかどうかについては、
まったく分からない?なのだが
不安に駆られるほどの事でないと、逆に面白くないというのも事実。

来年は、飛べないかもしれないというギリギリ感は
その年の飛行を充実したものにするようです。


〜写真展〜

今年、はじめて札幌で写真展を開催しました。
今考えると、帰国後一週間での開催はかなり無謀で、写真展というよりは
パネル展という趣であったけれども、良い経験にはなりました。
(本も100冊ほど売れました)

来年の写真展(流山、佐倉、成田)では、完成度の高い納得の出来る写真展をやりたいなと思って、いま頑張っています。
機材と時間的に、言い訳が出来ない気合いの入った状況を作り出したので
あとはみなさんにぜひ見に来ていただければと思っています。


〜みなさんへ〜

今年は、私にとっていままでやってきたことが形になった
節目になる年だったのですが
その意味で本を購入してくれたり、写真を沢山買ってくれた方々、
本当にありがとうございまいした。

なんかうまく言えませんが、言いたいことは
これからも作品に詰め込むつもりですので
来年もよろしくお願いします。

2008年湯口的エッセイ

〜本当のアラスカ〜

今年は、アラスカの原住民(ネイティブ)が住む村を本当に数多く回った。40ぐらいは回っただろうか?昨年までは、フェアバンクスとかアンカレッジとか白人圏の街をベースに空を飛んでいたのだけれど、今年は白人が全くいない場所ばかりに飛んでいったので、そういう意味で本当のアラスカを界間見た様な気がした。

今年、私がはじめて感じた「本当のアラスカ」とは、

エスキモーやインディアンだけが住む村のカルチャーであり、
舗装されていない(舗装できない)道路が放つあの独特な埃っぽさであり、
そして村の子供達の生きる笑顔とその裏に見え隠れする大人達の
説明しがたい虚脱感みたいなものだった。
大自然に代表される表向きのアラスカだけではなく
これからはネイティブだけの村に行って
その深淵に触れてみたいと思うようになった。

〜芥川賞〜

今年は、二人の女流作家が受賞した。
川上未映子さん、作品はともかく歌手で作家(自称、文筆歌手)というのがユニーク。自分も「野営飛行家」という訳の分からないネーミングをしているので応援したくなった。
楊逸さんは、受賞作も良かったけれどその前の「ワンちゃん」が大変印象的だった。女性の感性と、それに他国の感性が混じると、さらに心に響く表現になるのだな、と。

〜自由な国アメリカ〜

オバマ氏の演説で「アメリカは、あらゆる事が可能な国だ」と言っていた。
確かにそう思う。飛行機の運用に関して言えば、アメリカ以外で自由に飛行機を飛ばせられる国はない(特に私のような貧乏人は)でも、もしアメリカより断然近い国ロシアで飛行機が自由に飛ばせられるのなら、私は絶対にロシアに行っていたし、いやもしかしたら日本(北海道)でも良かったのかもしれない。でも自分が思うような飛行は、アメリカ以外では考えられないのが現状だ。
これは、飛行機に限ったことではなく他のジャンルでも同じだと思う。
あの国は本当の意味で地球上もっとも自由な国であることは間違いない。ちなみに自由ということは、みんなが幸せになれると言う意味ではなく、望んだものだけが自分の価値観における幸せを得られるという意味であり、そこらへんの感覚はこの国とは大きな差違があるような気もする。
だから、どう・・ということは別に無いのだけれど。

〜デジタル〜

デジタル○○、、というのがすごい。
思えば、私が行う表現すべてがデジタル経由である。
Web、出版、写真展、映像、、、すべてデジタルを介しての出力だ。
個人表現のスピードとマスコミをスルーするという意味において、
完全な曖昧さの排除はデジタルの革新的な部分であり、
そこから直接くるメッセージや作品は受け手個人に
他者のバイアス無しに直接ヒットする。

近年、デジタル表現における曖昧さの欠如・・
などと、よく言われたりするけれど

厳しい山に入ったり、飛行機に乗ったりするとき
曖昧さは死を意味するので、私は「アナログのあの曖昧さが重要だ」とか
いう人をあまり信じない。曖昧さは、自分の尺度の中で生まれる
揺らぎみたいなものだし、それはあくまでも自分の頭の中での話であり、
最終的なアウトプットの段階において「曖昧さ」はちょっと失礼だと思う。
たぶん、アナログを語る人たちは、道具に酔っているのであり
自分もその昔、アナログなカメラが大好きだったから、それはよく分かる。
(いまでも所有しているし・・・)

まあ、普段の自分があまりにも曖昧=いい加減?なので
自戒の意味もあるのだが。


〜曖昧ついでに、元航空幕僚長〜

このニュースが出てきたとき、
「いろんな人から、質問がくるのだろうな」と少し身構えていたのだが
実際は誰も質問してこなかった。意外だった。

想定される質問は、こうだった。

「自衛隊の戦闘機パイロットも、普段から幕僚長の言っているような事を感じながら訓練しているのですか?」

「すくなくとも組織のTOPがああいう自体になってしまったことに、ショックであると思うのですが、いかがですか?」

「そもそも自衛隊員は何を心の支えにして命を張っているのですか?」

彼のやったことは、この国の曖昧さを露呈した。

そういえば、戦闘機パイロット時代、
カヌーイストの野田さんのエッセイを読んでいて

「自衛隊機が、轟音と共に空を飛んでいる・・・落ちろ!と叫んでみた」

というフレーズを読んだ覚えがある。

ナンセンスでありつつも
自衛隊員のイデオロギーについて
本にしてみると面白いかもしれない。

でも兵士は、語らない。
ただいつでも戦える準備をするのみである。

2008年12月30日火曜日

家探し

最近、ニセコで住む&ギャラリーになる家を探しています。
写真の制作で場所が必要なことと、自分のギャラリーがあれば
もっといろんな人に見てもらえるのに、という理由で。

とは言いつつも、
ニセコは極端に賃貸&中古住宅物件が少なく
数年間探していますが、良い巡り合わせはありません。

自分の活動起点のアラスカ(フェアバンクス)は、
飛行機と生活ができる賃貸ハンガー(オーロラが見える素敵な場所!)
が見つかったのだけれども(写真)、
肝心のニセコは、なかなか良い場所が見つからず。
羊蹄山が見えるギャラリー&アトリエは
いつのことになるやら・・・・

結婚と家(土地)は巡り合わせとタイミング、、と誰かが言ってたっけ。

ここでソローの「森の生活」を開くと、こう書いてある。

「なぜ、若者は、生まれたとたんに自分の墓を掘り始めるのでしょうか?若者は、財産という重荷を相続した途端、手放すまいとし人間らしい暮らしができなくなります」(WALDEN ヘンリー・デイビット・ソロー 今泉吉晴:訳)

こうやって
ソローや鴨長明をしつこいくらい読み返していると
人生に家なんかいらない、テントで十分だ
なんて気持ちにもなるし、
また逆に、長い飛行や冬山の旅から帰ってくると
自分の家やギャラリーが欲しくなってくる。

そして、またこうしているうちに
写真展が始まって、アラスカ渡航の時期になって
そんな事も忙しさから忘れてしまうのだろうけれど。

おまえは、まだ定住するな。
と誰かから言われているようです。

定住と結婚は
ある種の安定を意味するからなぁ。

なにが言いたいのか分からなくなってきましたが
とにかく明日はパウダーを浮遊滑降して不安定を愉しもう。

2008年12月27日土曜日

写真を創る

年末は、

冬山パウダー

写真制作

ニセコのスキー場でパウダー

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の繰り返しで、
アクティブかつクリエイティブなニセコライフが、最高だね!

とクールに言いたいところですが、
実際の所は、狭いアパートで山スキーと写真とインクと
Macと木材パネルにまみれた泥臭い生活だったりします。
(これがアラスカだと、飛行機にカメラに、お酒?)
写真展を控えて、パソコンとプリンターそして写真と対峙していると
「これが創作の日々というものなのね、、」などと思っています。

創作に関して少し話すと、

本を作るにしても写真を印刷するにしても
最近はすべてデジタル出稿なので、MacとEpsonの大判プリンター
そしてAdobe RGBのキャリブレーションモニターは欠かせません。
写真をやるには、正確な色が出るモニターが絶対に必要なんですが
これがまた20万円もするシロモノで、それを色補正するソフト、機材etc、
そして、より大判の写真を印刷するにつれ、
さらにアラスカ風景用高解像度のカメラを来年あたり準備かなと思いつつ
(ニコンが超フルサイズ級のMXフォーマットを出すらしい、、4000万画素?でもフルサイズ2400万画素のD3Xかα900でもいいかな?)
こうやって機材の研究と出資は止まらない最近です。
(分からない人すみません)

でも、自分の体験を正確に表現するためには
そういう研究と投資は、必要不可欠でもあるんですね。

それにしても、良い時代になったなと思います。
一昔前では、絶対に無理だった個人のカラー印刷や微調整が
自分ですべて可能になってしまうんですから。(しかも満足できるレベル)
映画フィルムのような奥深い写真を目指しつつ、
個人レベルですべてを作り出せる世の中になったことに
喜びを感じています。

これは写真表現に限ったことではなく
様々な創作の世界でいえることだとおもいます。
(超コンサバな世界は分かりませんが)
やろうと思えば個人で何でもできる時代になったんでしょうね。

「なにかをあきらめる必要がない」言い換えれば
「言い訳ができなくなった時代」の到来は大歓迎です。
その言葉の胸底にあるのは
「後は飛び出すだけ」


ちょっと何が言いたいのか分からない日記になってしまったので
最後に、最近読んだ、見城徹氏の本の見出しに書いてある言葉を。

「すべての創造は一人の人間の熱狂から始まる」

2008年12月22日月曜日

ニセコ=日本のアラスカ

というのは、少々強引か?

というのも本日、アラスカ通の知人と
新しくできたニセコのピザ屋さんで話をしたのだけれど、

このピザ屋さんの主人もニセコに来る前は
アラスカでワナ猟やらハンティングやらあらゆる野外活動を
やってきた強者であるらしく、
店内では私を含めた3人で、
アラスカ話のオンパレードになってしまいました。

スピナード通りの日本食レストランの話から、
フェアバンクスのおっかさんの話、
カリブーの出現情報と
そしてビーバー村事情の話まで・・・

ご主人自身で倉庫を改装したという、
すぐれておしゃれな店内の雰囲気と(デートにはうってつけに違いない)
小さな窓から、ちらりと見える雪景色、
そして
ピザ焼窯の薪のかほりで、ここはアラスカか??

と錯覚してしまったのです。

そういえば、ニセコにはアラスカ歴のある日本人が結構いるかも。
他の地域も知っている自分として、確かにニセコは
なんだか同じ北海道でも「異質な居心地のよさ」があるような気がします。

思うに、その土地の印象を決定する要因は沢山あるけれど
もっとも作用するのは「風景」ではなく「人」ではないかと。

「人」という点で、
アラスカも、ニセコもなんだかとても
似ているような気がします。
(アラスカというよりもっと細分するとフェアバンクス、
いやガードウッドかな?)

人生を愉しんでやろう、という意志が感じられる
ニセコに移住してきた人たちに会うと、本当に元気がもらえます。

それと同時に、
「ああ、おれも早くフェアバンクスとニセコに家を建てねば・・・」
と思うのですが。

ということですっかりお気に入りの
このピザ屋さんのInfoです。
↓↓
ニセコアンヌプリエリアのペンション街に本格ピザレストラン
Del Sole (デル ソーレ)



TEL : 0136-58-3535
営業時間 : 12:00 - 15:00 (L.O.14:30)
     17:30 - 22:00 (L.O.21:30)
定休日 : 水曜

Google地図


ニセコに遊びに来たときは、ここで一緒に飲みましょう。

2008年12月15日月曜日

Coyote(コヨーテ)という自然派雑誌に掲載





Coyote(コヨーテ)という自然派雑誌に
私の1ページ記事が掲載されました。
http://www.coyoteclub.net/catalog/034/index.html#

昨日、出版社から本が送られてきたのですが
なんともリッチな感じの本ですね。
本屋さんで見かけたら、記事を探してみてください。
本の表紙は、星野さんが焚き火をしている写真です。

まあ、私の記事はともかく
アラスカ好きの人は手に取る価値はあるかと思います。

あと、

『火を熾す』[1902年版]
ジャック・ロンドン 訳=柴田元幸

を紹介するなんて渋いなぁ、、と思いました。

2008年12月11日木曜日

3連続!写真展開催

来年の1月から、以下の写真展を行います。 
(一部、招待されての出展です)


1.第2回「 ルシャキパル展」

日時:2009年1月21日(水)〜25日(日)
場所:千葉県 佐倉市立 美 術 館
交通アクセス:京成佐倉駅南口より、徒歩8分

*美術展との合同展示です、招待という形で出展します。
会場には、初日だけいる可能性があります。
その他、美術作品や音楽家さんの写真など面白そうな方々の作品も並ぶそうで、なんだか楽しみです。
ポスターの猫が、なんだかふしぎ。

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2.「翼とテントと北極圏」 写真展

日時:1月26日(月)〜2月5日(木)
場所:千葉県成田市公津の杜3-7-21
   「GALLERY 海」

*友人が運営するギャラリー「海」での個展です。
常駐できませんが、実験的な?写真を飾りたいなと思っています。


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大きな画像はこちら
3.「アラスカ極北飛行」写真展
〜翼が見たアラスカ〜

日時:2009年2月6日(金)16時〜2月8日(日)19時
場所:流山市生涯学習センター1F ギャラリーにて 
交通アクセス:「つくばエクスプレス」で「秋葉原」(約30分)
        →「セントラルパーク駅」下車、徒歩3分。
        入場料、大人500円、学生→タダ

*私が主催する関東圏での写真展です。かなり大きな会場で
 大きな写真と映像を展示します。あと写真と本を、販売します。
 最終の日曜日は打ち上げしたいなぁ!
 

なお、3枚目のポスター(2枚目でも可)を貼ってくれる方は、
A2サイズをこちらから送りますのでべたべた宣伝してやってください。

(協賛のご案内もしています

待望の関東圏での写真展示。
きっとアラスカの空を感じてもらえると思っております。

2008年12月3日水曜日

掟破りのカミホロ滑走


昨年のカミホロ雪崩事故を知っているのに滑るなんて・・・!

と思われがちな上富良野にあるカミホロカメットク山ですが
条件が良ければ、どこでも滑ることが出来るんです、

という見本のような雪山スキーを土曜日に行ってきました。

例のごとく写真の羅列で解説です。

春山のような・・・陽気!

汗をかきながら登っています。

知る人ぞ知る安政火口の入り口。
遠くに見えるカミホロ、とても珍しい光景。
(いつも天気が悪くて、視界が悪いので)

安政火口の蒸気がでるなか、登ります。

結構激しいUP & DOWN


右が八手岩、左がカミホロ山正面壁

夫婦岩というなかなかオツな場所で、ラーメン実施

その後、滑降!


すごい
おおきな写真で見てみたい!!

いやはや、どんな場所でも滑ってしまう相棒達に脱帽の雪山でした。
今回の写真を整理しながら、次の著作本に載るパートなどを考えつつ
「やっぱヤマに行くべきだ・・・」と思ってしまいました。

最近、執筆に明け暮れているので・・


しかし、つい最近まではアラスカの空を飛び
いまは日本の山をよじ登るという行為の、なんという不思議さ。

空を飛ぶのと山を歩くという行為は、あまりにもかけ離れているように感じますが
そんな行為が、自分の中に位相差を生んで新たなものが芽生えそうな気もするのです。

まあ、本当は好きなことを全力でやっているだけなのですけれどね・・・

ひとまず写真の報告でした。

さて来週はいずこのヤマへ?