2007年2月15日木曜日

蜃気楼

2月14日、正午

アンカレッジメリル飛行場を離陸、
北北西のデナリ方面を見て目を疑った。

デナリ方面アラスカ山脈の数百マイルにも広がる
山並みの手前に、海かと見まがうほどの巨大な水域が見える。

なぜだろう?

もちろん、実際に地図上では海も湖もあるわけがない。
そして、その海にデナリの巨大な山容が、映り込んで
黄金色に輝いている。


蜃気楼、、


デナリの山容は、僕の視線の中心から大きく左右に構え
黄金色に輝く鷹揚な姿を、その手前の蜃気楼の海に映している。

飛行中はあまり一点を注視しないはずの僕も
このデナリの蜃気楼から、しばし視線をそらせなかった。

夢か幻か、
どうしようもない現実を生きる人間への贈り物か。

視覚が経験したことのない距離、はるか遠くに輝く山の蜃気楼


信じられない景色を見たあとは、
心の芯のどこか大切な部分が
確実に、、その構造をちょっとだけ変える。

飛行機乗りになってから10年以上が経ったけれど
今日のような景色を見て、さらに今日以上の風景を見て
そうやって、ずうっと風景をこころの中で追い続けて
いつか死んでゆくんだと思う。

2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

蜃気楼の写真は撮らなかったのですか?もしあるのなら是非見てみたいです。

湯口 公 さんのコメント...

蜃気楼の写真は、カメラを持っていましたが
撮りませんでした。
写真では、語れない美しさと不思議さ、、を感じて
撮る気になれなかったというのが本音です。
目に見えなくても、美しく感じることが
なんだか大切なような気がしたのです。