2008年9月9日火曜日

渡鳥的夜間飛行


一年ぶりに夜間飛行しました。

怖いか?ってよく聞かれます。
そういわれれば、怖いかも知れない。


飛行場のハスキーの傍らでオーロラが出るのを待っている夜中の10時頃、
鳥の群れが数十羽、ハスキーと自分の上を渡り鳥していきました。
彼らが飛行場の近くにある 「渡り鳥休憩所」を離陸したばかりの群れだと仮定すれば
(たぶん編隊が乱れまくっていたのでそうに違いない)は、
なぜ長い旅の最初が夜なのだろうか?

という不思議な疑問が湧きます。

夜に出発する理由はなんなのか?

それは僕が一年に数回しかアラスカの夜を飛ばないのと似ているような気がして
なんだか彼らとは共通の感覚があるのかもしれない・・なんて勝手に思いながら
ダウンジャケットを羽織りつつ、オーロラを待ちながら
ひとり北の空をじーっと眺めるのでした。

その後、フェアバンクスの北の丘でオーロラ鑑賞ガイドをしている友人から
「オーロラが出ましたよ」との報告が携帯にあり、早速夜間離陸。


フェアバンクス北20海里、上空3500フィート、薄雲、乱流無、オーロラ少々。

報告ほどでもないオーロラの夜空を、ひとりぼっちで夜間飛行。
光がほとんど存在しないフェアバンクスの北。
感覚としての全周は、上も下も、左も右も、斜めも、反対側の斜めもなくなり
唯一判断できるのは、飛行機の計器と
ちらりと後ろを見たときに感じるオレンジ色に輝く フェアバンクスの街灯りだけです。

ああ、フェアバンクス

夜間飛行の最中、 あの暗夜の夜景が漆黒の恐怖に浮かぶ母の家に思えて
早く、本当に、安心できるあの場所に帰りたいと、切に願います。
それが夜間飛行をする飛行家の考えていることです。
もしたとえ飛行中に、夜間の景色を楽しんでいるふりをしていても。


その後、飛行場に帰投し 一年ぶりの夜間着陸を無事終え、
飛行機のエンジンを止めて地面に足をつけました。

ふくらはぎに感じる自分の体重を感じながら
やっぱり地面はいい、 大地に足がつくという本当に当たり前で
いつも感謝すらしないことが、
どれほど大切で安心できることかを
ひさしぶりの夜間飛行の後、実感しました。

当たり前だと思っていることが
目の前から消えてしまうと本当に大事なものが何なのかわかるような気がして。


地面に立って生きているだけで幸せ。

いつも引きつけてくれる地球に感謝。


もしかしてよ、
渡り鳥たちが夜に旅を始めるのは
当たり前になりすぎた地面に感謝するためなのかも。


写真:夕暮れを飛ぶ3羽の鶴

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

お久しぶりです。
アラスカ飛行楽しみに拝見しています。
「夜間飛行」美しい響きです。その美しさに憧れて、空に舞うのでしょうね。
北海道も秋風を感じるようになりましたが、アラスカ滞在中、数多くの名作を写してきてください。

湯口 公 さんのコメント...

white garageさん

コメントありがとうございます。

フェアバンクスは落ち葉の季節になり
段々と日が短く、寒くなってきました。
北海道の10月中旬のような雰囲気です。

10月に北海道に写真展開催のために
帰りますが、また同じ季節を味わえるのが
なんだか不思議で、でも楽しみです。