2010年5月24日月曜日

カビックのスーザン


北緯70度(正確にはN69.40)のカビックキャンプでは、
スーザンさんという管理人(というか唯一の住人)が
1人でお客さんを切り盛りしています。

しかしながら冬は誰も来ない場所でもあり、
私は去年の12月から約半年ぶりに出会う人間だそうで
それはもう歓迎してくれました。

一緒に食事をしながら、いろいろとお話を聞きました。

このスーザンさん、7年前からこのキャンプの管理をしているそうです。

6月から8月までは、
ブッシュパイロットが連れてくるお客さんのお世話で忙しく、
その他のシーズンは、それなりにキャンプの維持をしながら、
自然を楽しんでいる様子です。

私のテントの前で誰かと話している
スーさん(スーザンのニックネーム)、

マージさん

この北極ジリスが友達であるらしく

「マージ、マージ!」

とお話しをしていました。

そのほかにもキツネやフィレットの類も友達であるらしく
盛んに声をかけていました。

まるで北の国からの螢ちゃんのようですが、
現実のアラスカはそう甘いものではありません。

スーさんは2年前、川で取水ポンプの作業をしている時に
グリズリーに襲われた時の話をしてくれました。




キャンプから数十メートルにある川から
取水ポンプを外す作業をしていた時、
突然見えない場所から、グリズリーが襲ってきたの。

そのときは、銃を持って行っていたのだけれど
側に置いて作業をしていたから、間に合わなかった。


まず後頭部を咬まれて、(後頭部の傷を触らせてもらう・・・)
そのあと、お尻を叩かれたの。

そのとき私は、

「このクマは、この場所を自分のテリトリーにしたいだけなんだ」

と思って、死んだふりをしたの。

するとグリズリーは、私を転がして
私が無抵抗であることを試したわ。

こういう時は、抵抗したり力を加えたりすると
相手がそれに気が付いて、やられてしまうから
じっと我慢するのよ。

グリズリーは人間を食べに来ているのではなく、
自分のテリトリーであることを証明したいだけなんだから。

その後、2〜30分グリズリーは私を転がしたけど、
そのうち、いなくなったわ。

すでに歩けなく出血していた私は、キャンプまでの距離を
這って戻って、電話で助けを呼んだの。

しかし、その後パイロットの助けが来たのは、10日後。
その間、私はずーっと1人でこのキャンプで
耐えていなくてはいけなかったの・・・・

結局、フェアバンクス経由でシアトルまで戻って
手当を受けたわ。




現在も元気に働くスーさんだが、
クマへの警戒心は、非常に強い。

テント内には、銃が5丁ほどあり
すべてがロードされている(弾がこめられている)状態だ。

「外に出る時は、いつも周囲を警戒すること」

「まずは、周囲をみること、それから動き出して」

「音にも十分注意して行動して」


北海道でも、最近ヒグマに襲われた方の
ニュースがありましたが、

自然の中では、人間は本当に弱いものである

と実感している次第です。

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