2009年8月27日木曜日
極北カリブー猟(カリブー角運び屋編)
ブルックス山脈の北、地球儀で見ればかなり上の方にあるアラスカの
北極海に近い場所にブッシュプレーンで降り立った後は、
本格的なカリブー猟に入るわけだ。
そして結局、ジョンは2頭、ヨシは1頭のカリブーを仕留めることに。
しかしながら狩猟の話については、それがどれほど魅力的でも(興味のない人にとっては苦痛でしかないので)私の狩猟HPで更新することにします。
ただ狩猟について1つだけいえること、それは
音1つしないツンドラの上、寂寞感極まる場所にじっと待ち、
凛とした面持ちで冷たい冷寒な川を、その命をつなぐために
必死に渡っているカリブーたちの生命を絶とうとする行為は、
我々自身をカリブーと同化させてしまうような
とても言葉では表現できないような魂の揺さぶりを伴うものであるということ。
人はどんなものでも良いから「自分以外の世界の何か」に対して
ある種の尊敬がなければ、生きてゆけないと思います。
いわば、一種の宗教であり誰にでも存在しえるもので、
それが自分の目標となり、明日を生き抜く力になるんじゃないかと。
そう言う意味で、カリブーをはじめとする動物は完璧な存在です。
そして自然や動物を自分の宗教にすると裏切られたりすることはなく、
だから我々自然系の人間は野外で落ち着くのかもしれません。
さて、
カリブー3頭分の肉と角をどうやって運ぶか?
人間×2+αしか乗れない小さな飛行機ハスキーなので
もしかしたら角は、置いて帰らなければいけないかも・・・などと
思案していると、ジョンの一言。
「カリブーの角は、非常に尊重すべきものだ、だから全部持って帰ろう」
こうして2つ目の夢、
「カリブーの角を翼下に付けて飛ぶ」
が現実となった。
翼に付けるまだベルベットの剥がれていない、さわるととても心地のよいカリブーの角を見ると確かに持って帰りたくなる、
しかし・・・本でしか見たことのない世界だし、
さて右と左のどちらに付けたらよいものか・・
飛行機の翼を支えるステーにどうやってくくりつけるのか、
やってみなければわからないけれど、チャレンジの価値はあると思った。
知恵の輪を解くのと反対の手順?で巨大カリブーの角を
ステーにしっかりくくりつけてダクトテープでぐるぐる巻き&ワイヤーで補強。
そして肉も後席のシートに沢山(約100kg分)積み込む。
こんなんで本当に離陸するのか??と思いつつ
出力最大で河原を飛び出すと、意外に簡単に飛行機は浮揚した。
きっとハスキーの余剰エンジンパワーのおかげだろう。
しかし巡航中は、常に機体が横滑りを起こし、
まっすぐ飛ぶには、常にラダーとエルロンの操作が必要であった。
それに悪天のツンドラ地帯を超低空で飛ぶ恐怖。こういうときに限って
雲は低く視程は最悪だ。
そして着陸。
Happy Valley上空で地上風をチェックすると、とんでもない横風が右方向から。
10kt以上の右横風成分はあるな・・・角を試しに右翼下に付けて飛んできた俺は
かなり真っ青状態になり(理由は、説明が難しいのでそういうもんだと思ってください)言葉で表せば、超強行危険パワーランディングを決行したのでした。
飛行機が右に振られ、右に付けた角が右に曲がる力を作り・・・・ラダーをけっ飛ばす足に履いているのは、ニセコのスーパーで買った580円のサンダルで足首に力が入らずつらい。
無事着陸とは言い難い接地であったが、角も肉も飛行機も無事であった。
たぶん、あの着陸は一生の中でもっとも力業の着陸だったに違いない。
角を付けた機体を無事にHappy Valleyに持ち帰ったとき、周囲の賞賛の声が
あがっていたことをあとで聞いたとき、
これで自分もブッシュパイロットになったのだ
という安堵と歓喜の気持ちでいっぱいになったのだった。
さて、あとは河原に一人残るジョンの回収のみだ。
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿