2010年7月6日火曜日

カリブー大群捜索日記(3)

5月24日

霧のため飛べず

それにしてもカビックは季節外れの雪が多すぎで、
いろいろな作業をしなくてはいけない。
一人のスーザンを助けるため、ジェネレーター用の燃料カンを運ぶ手伝いをする。
雪が多くて動力が使えず、40キロの燃料を歩いて運ばねばならないので
かなり重労働。

それにしても霧がとれない。
地上付近を視程ゼロの雲が漂って、
とてもではないが飛ぶ気になれない。


海岸から30マイル離れているカビックでも、いまだ北極海に浮かぶ海氷のせいで
夕方から朝まで(悪いときは一日中)霧に包まれる。
風は、常に北風か北東から吹き、しかもそんなに弱くないので、
霧の発生条件と違うのだが、確かに霧は存在するので理解に苦しむ。
パイロットは、常に現況で(未来を)判断するので
いまいち経験則にそぐわないことがあると、頭を悩ませてしまう。

北には遮るものがまったくないツンドラだから、
すべてが海と氷と気圧の言いなりだ。


ひたすら待つしかない。


5月25日

朝、しつこかった霧がやっと晴れ上がり、飛ぶのに問題なくなった。

滑走路は、いまだクラストした雪で、でこぼこだが、
それでもだいぶましになり、バウンドしながら離陸した。

午前、ひとまずカビックから数十マイル東にあるレッドヒルといわれる
東西に延びた丘陵地帯に行ってみる。赤茶けた丘が印象的だ。
温泉があると聞いたが、見つからず。

そこから、非常に狭い谷を北方向に抜けて、川を下り北極海を目指す。
どこが海岸線で、どこからが海なのか分からない北極海は、
3年前のバロー以来2度目であり白色の氷塊が、まさしく極地の証だ。

北極海沿岸に浮かぶフラックスマン島へ。同島はポリゴンの島で、
建築物が1つ霧の中から見つかるが、周囲は海氷に浮かび、
島という感じではない。

カニング川河口から、陸地へカビックに戻る。
途中、川のある特定の場所だけに
とても青く他の部分よりも固く凍っている場所が2カ所ある。
大きさは数百メートル、不思議だ。

結局、カリブーはごく少数しか見つからず。
この時期に季節外れの雪が大量に残っているのが、
カリブーが群れを作らない原因であるそうだ。

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